先日、クラウドファンディングで「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」を支援したので、ブログを読んでくださっている皆さんにも、ご紹介したいと思います。
ワクチンで防げる病気のひとつに、ヒトパピローマウイルスがあります。このワクチンで防げる代表的な疾患として、子宮頸がんがあげられます。子宮の入り口近くにできるがんで、日本では年1万人がかかり、3,000人が亡くなっているとされています。
みんパピ!プロジェクトは、女性特有の子宮頸がんや男性の中咽頭がんをはじめとしたHPV関連疾患を防ぐ方法を学んでいこうというプロジェクトです。
情報が届かず公費で打つチャンスを逃してしまう
HPVワクチンは、2013年3月から定期接種化され、小学校6年生~高校1年生相当の女性であれば、公費で接種することができます。しかし、副作用についてのセンセーショナルな報道があいつぎ、現在にいたるまで接種勧奨(市町村による積極的な情報提供)が控えられてきました。
市町村から個別の案内が届かないため、公費で接種できることさえも知らない人が増えています。HPVワクチンを3回分全て公費(定期接種)で受けられるのは高校1年生の9月末までで、公費で接種できる期間を過ぎてしまうと、自費(任意接種)となり、5~6万円かかります。せっかく公費が使えるのにチャンスを逃してしまう人が多いのは問題です。
ワクチンの安全性や効果についても、十分な情報提供が行われてこなかったために、感情的で陰謀論の入り混じった、根拠があいまいな情報があちこちにはびっている状況です。いまだに「何となく不安だなあ」とか「怖くて打ちたくないなあ」という人もいます。HPVワクチンの問題をきっかけにしてワクチン全般に対して不信感を持ってしまう人も少なくありません。この点についても改善していく必要があります。
日本の接種率はわずか0.6%、先進国の中できわめて低い
HPVワクチンは世界各国で使用されており、2006年以降、世界中で2億7000万回以上接種され、安全性だけでなく効果が確かめられています。男性にもメリットがあることが分かってきており、オーストラリアや英国、米国では男性への接種も始まりました。
WHOによる予測では、2019年時点で少なくとも1回HPVワクチンを接種している女性の割合は、ノルウェーで93%、オーストラリアで89%、韓国で72%、アメリカで61%。一方で日本は接種率が極端に低く、わずか0.6%です(*1)。
グローバル規模で子宮頸がんをはじめとしたHPV関連疾患が撲滅へと向かいつつあるなか、日本は取り残されつつあります。このままHPV関連疾患が放置され続ければ、風疹と同じように、日本へ渡航する人に向けてアラートが発されるかもしれません(*2)。日本のHPVワクチンをとりまく状況は先進国の中では異例なのです。
*1) World Health Organization. Data, statistics and graphics(WHO/UNICEF Human papillomavirus (HPV) vaccine coverage estimates in excel) : Excelファイルへの直リンク: HPV_estimates.xlsx
*2) Centers for Disease Control and Prevention. Rubella in Japan : 米国のCDCによると、2020年4月時点で、風疹の注意レベルは3段階中2段階目の「警告」です。
病気にかかって後悔する前にHPVのことを知って防ごう
いま私たちに必要なのは、HPVについての、感情論ではなく、陰謀論でもない、根拠のある正しい情報です。特に、思春期の中高生男女にむけて提供していくことで、日本でも、低いワクチンの接種率が改善され、HPV関連疾患にくるしみ、亡くなる患者さんを減らすことができるはずです。
あのときワクチンのことを知っていたら、あのとき子宮頸がん検診に行っていれば、と病気にかかったあとで後悔してしまうのでは遅いのです。防げる病気だということに気づいたときには、すでにがんが進行しているかもしれません。早期発見により円錐切除術ですみ、妊孕性(妊娠しやすさ)を温存できたとしても、妊娠したあと流産や早産のリスクが高くなることがわかっています。
病気にかかったあとで後悔する前に、HPV関連疾患がワクチンで防げることを知り、ワクチンのメリットとリスクを納得したうえでワクチンを受ける人が増えてほしいなと思います。検診も怖がらずに安心して行けるようになってほしいなと思います。
みんパピ!プロジェクトの活動が実り、芝生の上に爽やかな青空が晴れわたりますように。このプロジェクトにたずさわるみなさんを心から応援しています。