CRSサバイバーによる風疹・CRS関連の情報提供や体験談のサイト。

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これから働く君へ。助成金制度を知っておこう。

視覚障害者の方へのソフト購入や聴覚障害者の方への手話通訳費用には助成金があります。申請に時間がかかりすぐ実現できるというわけではないのですが、特に就職活動中の学生さんは特に知っておくとよいと思いますのでご紹介します。

例えば、視覚障害のある方の場合どうかというと、仕事に使うツールとしてはJAWSやPC-TalkerといったスクリーンリーダーやZoomTextという拡大ソフトを使い分けて使用するわけですが、どれも高価です。なので、買う前に支援機器を借りて半年ほど試すことができます。『高齢・障害・求職者雇用支援機構』で貸し出しを受けることができます。その後、『障害者作業施設設置等助成金』という制度を利用して補助を受けて購入するという流れです。普段のお仕事の中で試しながら自分に合ったツールをじっくり時間をかけて選ぶことができるということですね。

聴覚障害向けの手話通訳に関しても「手話通訳担当者の委嘱助成金」というものがあります。ただ要約筆記担当者への委嘱助成金はなく全難聴が要望書(PDF)を出しているのですが、まだ実現していないようです。

プライベートではiPhoneやiPadが便利です。スマホはiPhoneをずっと使っているのですが、その日の調子に合わせて気軽にモードチェンジできるという点でとても気に入っています。読みづらいときは画面拡大やカメラ機能の使用、眩しいときは反転、目が死んでどうしようもないときは読み上げといったふうに時と場合に応じて柔軟にチョイスできます。もちろん全盲の人でも使用可能です。LineもTwitterもOKです。

iPhone3Gを使っていたときはコピペすらできない上に、SoftBankの電波もよくなくスマホのありがたみが全く分からなかったのですが、ここ数年で大幅に進歩したので我慢して使い続けてよかったなと思っています。Macも秀丸さえあれば使うのになあ…。

ワクチンの薬液を勝手に混ぜてはいけない、というお話。

東京都品川区のクリニックがワクチンを混ぜて接種したことが判明というニュースがありました。結論としては「本数が多くてかわいそうだからといって薬液を混ぜてはいけない」ということなのですが…。

ワクチン勝手に混ぜて接種は危険なのか?「混合液には未知の副作用も」 (BuzzFeedNews, 5月17日)

子供の予防接種に詳しい長崎大学小児科(感染症)の森内浩幸教授によると、同時に複数のワクチンをそれぞれ3センチ以上離れた場所に打つ「同時接種」は問題ないが、あらかじめ混ぜて打つことは、未知の副作用や効果の低下につながる恐れがあるという。

MRワクチンのように、もともと混合されている薬剤を接種することや、異なる薬剤を離れた場所に同時に接種することについては、安全性が確認されています。しかし、異なる薬剤をあらかじめ混合して接種する方法については、安全性が確認されていないということです。

品川区では、誤った方法で接種を受けた可能性のある人は、平成24年4月から平成29年4月までの間で計358名(書類の保存期限が5年間のため平成24年3月以前については区で確認できず)だとして、対象者に通知を送付し、抗体検査や再接種を行うとのことです。

品川区内の医療機関で誤った方法で行われていた予防接種について (品川区)

この件については、森戸やすみ先生がわかりやすく解説してくださっています。あわせてお読み下さいませ。

ワクチンを混ぜて打ってはいけません (Jasmine Cafe)

目や耳に障害を持っている人が職場で快適に過ごすためには。

もっと軽くライトに更新できればなあと思うのですが、遅筆でなかなか更新できていません。今日は、くらげさんの『聴覚障害者の自信の無さは自分の立ち位置や能力がわからないから!?ってお話』という記事を読んで「ほんまそれ!」って思ったので、その話をしようと思います。

聞こえないために、自然に情報が入らないということは、非常に深刻な問題です。聞こえる人は特に心の準備をしなくても自然に情報が入ってくるのですが、聞こえない人は「よーし、聞くぞ!」といちいち戦闘態勢に入らないと「聞く」という動作ができません。世の中には私たちが知らない音や言葉があふれているのでしょう。

「聞く」という動作そのものも大変です。日本語を聞き取るときの負荷は、瞬間英作文を日本語でやるのと似た感じです。中学レベルの簡単な英文でもすらすらと言えずに意外と頭を使いますよね。その状態が補聴器をつけている間、要は、会社で仕事をしている間ずっと続くのです。

仕事上でのコミュニケーションは、文脈があるので、事前に辞書をセットすることで正解率が上がります。問題は何気ないちょっとした会話の理解です。文脈がないので自然に聞いて理解するということはとても難しいです。たとえば、仕事をしていて誰かが注意されていたとして、その内容を知ることはできません。なので周りの状況を把握しづらいです。今の職場に入って最初の頃は周りの様子がわからなくて、しんどさを感じました。

しかし、周りの人と仕事をスムーズに進める上では、文脈のない会話を避けて通ることはできません。仕事をしている最中に聞こえないとなると、情報収集をするチャンスはランチタイムとかでの雑談です。

私の職場の場合、基本的に部署みんなでランチを食べに行くことになっていて、任意参加なので毎回参加しないという人もいますから、行かないという選択肢も許容されています。どうせよく分からないのだから行かなくてもいいのですが、少しでも情報をキャッチするために頑張って一緒に食事をとるようにしてます。

ランチタイムで情報収集をしていると昼休みなのにろくに休めずむしろ疲れるのですが、仕事以外の場で話す機会を持っておくと、普段一緒に仕事をしない人に何かお願いするときも、互いに心理的なハードルが下がるので仕事が進めやすくなる気がします。

あとは、見えづらいために、向こうから来る人が誰だか分からず、時には上司をスルーしてしまうことすらあって、ひょっとしたら相手は自分が無視されたと思うこともあるかもしれないということが気になっていました。その対策は実はシンプルで、朝会社についたとき、帰るときに、きちんとあいさつするということでした。

今の職場は、黙っていれば仕事が来るというようなことはあまりなくて(黙ってるとどうしても人が必要な仕事しか来ない)、自分で仕事を作って「これやりたいんですけど」とアピールしないといけないのですが、少し声の音量を上げたら、仕事やそれ以外の場で周りの方から声を掛けられる機会が増えましたし、いろんな仕事が回ってくるようになりました。自分の存在を周りにきちんと知らせる、ということもわりと大事なのかもしれません。

以上の二つをまとめれば、目や耳に障害を持っている人が職場で快適に過ごすためには、自分から情報をキャッチしに行くということと、取りに行くだけじゃなくて自分から相手に情報を提供する、という二つのアプローチが必要なんじゃないかということに最近気づきました。特にオチはありませんが、以上です。

相次ぐ麻疹感染のニュース。この機会に「SSPE」を知ろう。

新年度を迎えました。各地で麻疹の感染者が相次いでいます。

昨年夏に、関西国際空港での集団感染が発生し、あわせて33人の麻しん感染が確認されました(『関西空港内での麻しん(はしか)の集団感染事例について』、大阪府ホームページ)。そのうち27人は20代で、大人を中心に感染が拡大しました。報道によると、今年の3月末にも関空従業員の感染が確認されました(『関空島勤務の20代女性がはしか感染 大阪府など 注意呼びかけ』、産経新聞、4月7日)。

今年に入ってからは、山形県の自動車教習所での集団感染が話題になりました(『麻しん(はしか)患者の発生について』、山形県)。4月6日発表の第19報では54例確認されているとのことです。

風疹は胎児の生命に影響を及ぼす病気ですが、麻疹は風疹よりもさらにこわい病気です。この機会に「亜急性硬化性全脳炎」という病気を知ってください。SSPEといわれるこの病気は、小さな子どもが麻疹にかかって数年後に発症し、短期間のうちに寝たきりになってしまう病気です。「SSPEの悲惨さと青空の会の思い」という記事からメッセージを引用します:

SSPEは本当に悲惨な病気です。今まで元気に生活し、大切に大切に育ててきた我が子が、ある日突然発症し、数カ月で寝たきりになってしまうのです。目の前で見ている親の気持ちは言葉では言い表わすことなどできません。そして、患児の兄弟姉妹も、親ですらはかり知れない精神的負担を強いられます。このような、私達と同じ辛い思いをする家族がこれ以上出ることのないために、SSPE青空の会は、麻疹の恐ろしさ、SSPEの悲惨さを多くの人に知ってもらい、予防接種の大切さをこれからも訴え続けていきたいと考えています。麻疹の予防接種率が95%になればSSPEはなくなります。是非、医療、自治体なども、積極的に麻疹の予防接種率を上げる取り組みを進め、麻疹排除を推進していただきたいと思います。そして最後に、SSPEに罹ってしまった子供たちのために、早急なる治療の確立を切にお願いしたいと思います。

麻疹や風疹の予防にはMRワクチンの接種が最も有効です。今年度もMRワクチン接種の助成を継続している自治体があります。通常1万円以上するワクチンをお得に接種することができるのでぜひ助成を利用してください。

東京都
区市町村ごとの実施状況一覧(PDF)が提供されています。

神奈川県
横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、藤沢市、茅ヶ崎市、寒川町以外の市町村にお住まいの方の風しん抗体検査は県が担当。予防接種の助成対象および金額は市町村ごとに異なります。

「風疹ゼロ」月間だけど…。

先週ブログを更新する時間がとれなかったので1週間遅れとなりましたが、2月4日は風疹の日でした。

前日には『「後悔したから知ってほしい」妊娠中に“風疹”母親のこと思い』というニュース報道もあり、風疹に関するツイートが増えました。もうすぐ風疹をなくすことができる、そんな時代が一歩先にあるという状況下での風疹大流行、CRS当事者や医療関係者の方々の「防ぐことができたのに」という悔しい思い、そして「二度と大流行を繰り返してはならない」という想いを多くの方に知っていただきたいと思っています。

そこで、具体的なアクションとして風疹ワクチン(MRワクチン)の接種を呼びかけたいところですが、ワクチンの供給不足の問題がいまだ解決していません。定期接種にも影響が出ています。最近になってやっと国が緊急調査を始めたとのことです(はしかワクチン不足懸念 国が接種状況を緊急調査, 1/31 神戸新聞)が、しばらくの間はこの状態が続くとみてよいでしょう。

このような状況下で三重県からは『麻しん(はしか)の集団発生について』ということで2月10日現在13人の罹患が確認されています。広島県からも『インドネシアから帰国した麻しん患者の発生について』の報告が出ました。麻疹は、基本再生産数(免疫のない集団で1人の患者が何人に移すかを表す)が16〜21で、風疹の7〜9やインフルエンザの2〜3など他の感染症と比べると感染力が強い感染症です。1人でも患者が発生すれば集団感染へと結びつく可能性があります。

風疹や麻疹の怖さを認識する機会は普段ほとんどありません。集団発生や大流行が起きたときになってから自分も予防接種をしなくてはと思う方がほとんどです。そのような時こそ、広く予防接種を呼びかけるチャンスなのですが、今の状況ではあまり強くプッシュできずに歯がゆい思いがします。それでも多くの方が話題としてくださり、CRSという病気の認知度が上がるということがありがたいです。とにかく、時計の針を戻さないでほしい。前へ、前へと進めてほしい。風疹によって命を落とす子どもがいなくなりますように。

風疹ゼロプロジェクト、始動。2月4日は「風疹の日」。

日本産婦人科医会を中心に風疹ゼロプロジェクトが始動しました。2月4日を「風疹の日」として啓発活動を進めていくとのことで、来週には早速、風疹の日が到来するようです。

プロジェクトの背景は、日本産婦人科医会のウェブに掲載されているPDF(第103回(H28.11.9)みなさん風疹を忘れていませんか? -『“風疹ゼロ”プロジェクト』のとりくみ-)をお読みいただくとよく理解できるかと思います。

以前から繰り返し指摘されている通り、女性(特に妊娠を希望する方)はもちろん、30~50代の男性をターゲットにした取り組みが必要です。働き盛りの世代の方は病院に行くのに抵抗があるという方が多いと思います。私自身働き始めてから病院に行くハードルがぐっと上がりました。会社帰りに気軽に行ける、できれば就業時間中にサクッと予防接種を受けられるような仕組みを作るべきだと思います。注射が好きな人はいません。健康なのに注射などする必要があるのか、できればやりたくないというのは当然のことで、お金と時間のコストを理由にして予定を先延ばしにし続けてしまいがちです。キャンペーンを長くダラダラとやっても忘れられてしまうので、ハードルをぐっと下げた上で、集中的な啓発を行うことが必要不可欠です。

対策として最も効果があるのは予防接種を受けやすい仕組み作りだと思いますが、先天性風疹症候群という疾患があって、実際に困っている人がいるということがまず前提なので、このウェブサイトを維持するという形で様々な啓発キャンペーンに協力できたらなと思います。

手話の本が「社会福祉」や「特別支援教育」コーナーに置かれている件について

手話に興味を持った人が書店や図書館で本を探すとき、どこを探せばよいでしょうか?たいていは社会福祉や特別支援教育といったコーナーに置かれています。言語学のコーナーで手話に関する本を見つけることはめったにありません。例えば「日本手話で学ぶ手話言語学の基礎」という本は明らかに手話言語を扱った本なのですが、私が書店で買ったときには介護福祉のコーナーに置かれていました。

2011年に公布された改正障害者基本法は、日本で法律上初めて手話を言語として位置づけました。手話が言語であるならばなぜ言語学のコーナーに置かれないのでしょうか。図書館の場合は日本十進分類法(NDC)が広く使われているので、NDCで手話の本はどのように分類されているのか調べてみました。

国立国会図書館サーチで本を対象に検索すると、369.276(社会福祉>聴覚障害者福祉.言語障害者福祉)は314件、378.28(障害児教育>手話法.指話法.読唇術)は476件。一方、801.9(言語学>言語・文字によらない伝達)は108件で、その中に最近刊行された「手話を言語と言うのなら」や2007年の「少数言語としての手話」といった手話言語の本がいくつか含まれていますが、「人は見た目が9割」など身ぶりやしぐさを扱う本も混在しています。

なぜ社会福祉や障害児教育のジャンルに入ってしまうのか。それは、現在主に使われているのがNDC新訂9版(1995年)で手話が言語であるとは公的に認められていなかった時代のものであることが原因と思われます。最新版の新訂10版(2014年)では言語学のカテゴリに入ることになりました。NDC10版改訂箇所一覧によれば、NDC10版からは801.92(手話[手話言語])が新設されるとのことです。それに合わせて369.276には「→:801.92」の参照を新設、378.28には「*手話は,801.92に収める(別法:ここに収める)」の注記が新設されるということです。

国立国会図書館で2017年4月からNDC新訂10版が適用される(日本十進分類法(NDC)新訂10版の適用について)ため、今後、言語学の本として分類されることが増えるかもしれません。まずは4月になってどう分類されるかという点が気になります。

2016年の年末を迎えました。

今年は麻疹の局地的な流行があり不安が拡がったことやMRワクチンの品質に問題があるとして出荷停止となったことから、ワクチンが供給不足となり、9月には定期接種対象の子どもを優先するように厚生労働省からの通知が出ました。日本外来小児科学会の「MRワクチンの供給状況に関する緊急調査」によれば、2016年12月1日時点でも「MRワクチンの供給(入荷)は順調ですか?」という質問に対して、「平常通りではないが、なんとか必要な本数は入荷している」が40.8%、「注文しても必要な本数が納品されない」が33.3%となっており、まだ状況が改善されていないように思われます。

大人への対策も重要ですが、子どもへの定期接種が優先です。MRワクチンを打ちましょうと啓発したくても、私の地元のクリニックが入手困難といっているような状況ではトーンダウンせざるを得ませんでした。化血研の不正問題を受けて今までの護送船団方式を改めようという動きがあるようですが、供給不足時の柔軟な対応も含めて議論されることを期待します。

個人としては、春から新たなステージに進んだことで聴覚障害以外の障害を持つ方との交流が広がりました。異なるニーズを持つ方々と一緒にコラボレーションする機会をもち、他の障害については健常者と同じように知らないことばかりだということを実感しました。自分と異なる存在を受け容れるためには、まず相手のことを理解することが必要です。また、相手に自分を受け容れてもらうためには、自分の強みを知ることも重要です。来年は好奇心を忘れず得意なことをもっと得意にしていきたいなと思っています。

音声認識アプリのメリット&デメリット。

情報保障の現場で音声認識ソフトの活用がすすんでいます。5年ほど前まではまだ使えるかどうか分からないという状況でしたが、実用に耐えられるレベルになりつつあります。最近では「講演・講義の音声から字幕を付けるシステムを開発 -放送大学の講義で90%以上の認識率-」という京都大学の研究成果が話題になりました。

アプリケーション開発には複数の企業が取り組んでおり、そのひとつに「UDトーク」というスマホアプリがあります。昨日の「ろうを生きる難聴を生きる」という番組でも紹介されました(会話が見える!―人をつなぐ音声認識アプリ―)。無料で気軽に試せるのがポイントで、データがサーバ上に保存されない法人プランもありミーティングの際に使用している会社もあるとのことです。

UDトークなどの音声認識アプリを活用すると、サポートに必要な人数を減らすことができ、また多くの情報量を確保できるというメリットを得られます。従来は全て手入力する必要があり常に他者のサポートが必要でした。そのサポート担当者が本来仕事をするべき時間を割いて対応してもらうことになりますし、要約筆記者を頼むのにもコストが掛かっていたのですが、やり方を工夫することで一人でミーティングに参加することも可能になります。

また、他者の手を介すとフィルタがかかってしまうのも問題となっていました。サポート担当者の立場で「これは要らないから省いてもよいだろう」と判断された情報が業務を遂行する上で必要な情報であったり、あるいは逆に、「これは必要な情報だ」と判断された情報が自分にとってはあまり意味のないものであったりするかもしれません。音声認識アプリを使えば、聴覚障害者自身が自分で必要な情報を取捨選択することができるようになります。

一方で、話声が誤って認識されることがあるのがデメリットです。認識率が低いと従来とほとんど変わらないどころが、もっと悪いことすらあります。ミーティング参加者には音声認識されやすい話し方を心がけることや同時に話さないことなどを徹底する必要があります。この点に関しては工夫で補うことができ、逆にミーティングを「見える化」することで効率化がすすみ部署全体にポジティブな効果をもたらすことができると思います。

また、複数人の雑談への対応は困難という限界もあります。聴覚障害者にとっては雑談が最も困難を感じる場面です。ランチタイムでは、騒音があり、しかも両手が塞がっている状況下で予測不可能な会話が発生します。そのような場での雑談は、仕事を気持ちよく進めるための潤滑剤のようなもので、業務のヒントを得たり同僚の新たな側面を発見したりすることができ非常に重要な情報源といえるのですが、食事中にスマホを持って喋ってくださいとは言いづらいですよね。テーブルにポンと置くだけなら簡単でいいのにと思います。

いつでも、どこでも、会話が見える。そんな時代が早く来てほしい。ミーティング、そして仕事以外での雑談に参加できないということがキャリアアップを妨げる一つの要因になっています。いろんな場に気軽に出て行けるようになるといいなあと思います。

約25年前に風疹症候群で生まれた時のこと(2)

サイト開設3周年となりました。たまには初心に返ろうということで『約25年前に風疹症候群で生まれた時のこと』という記事の続きを書いてみたいと思います。

例の記事では生後10ヶ月頃から補聴器を装用し始めたところで終わっておりますが、補聴器はつけただけで聞こえるようにはなりません。聴者だって、いきなりアメリカに行ったって自然に英語が聞こえるようにはなりませんよね?聞こえない人にとって音声言語つまり日本語は「外国語」です。発音の仕方から教わって身に付けます。

聞こえない子供が日本語を学ぶのは聴者が英語を学ぶのと同じことなのですが、感音性難聴の場合は音が歪むせいで「聴こえても聞こえない」という大きな問題があります。聞き取るのも相手の唇を読むのも集中力が必要です。「ヨシ、聞くぞ!」と心の準備をしてからでないといけないので聴者のように自然に言葉を覚えることはできません。日本語を使いこなせるようになるには聴者の何倍ものの時間が必要で、実際、小学校低学年のころでも基本的な動詞である「行く」と「来る」を使いこなせていませんでした。

本や漫画、あとはアニメについている字幕を活用して目で少しずつ覚えたおかげで今では日本語をほぼ不自由なく使うことができます。ただ、話題になっている新しい言葉は自分から拾っていかないとよく聞き取れずにナニソレ?で会話が終わってしまいますし、TPOに応じた言葉のマナーも他の人の様子を見て覚えることができないのでネットや本で知識を仕入れる必要があります。

この頃思うのは聴覚障害という障害は単に聞こえない・聴こえないというだけでなく「情報があっても『情報がある』ということすら気づけない」という障害であるということです。たとえば、会議に出席していても他の人が何を話しているのかよく分からなくてお客さん状態になりがちです。その場で自分に関係のある情報があったとしても、そのような情報があったことすら分からないので同僚に聞くことすらできません。音声でのコミュニケーションが難しいために周囲から孤立してしまうことにつながる、これが聴覚障害=コミュニケーション障害といわれるゆえんなのです。

周囲から孤立してしまい聴者の世界に居場所を見いだせないとなると私の居場所はどこにあるの?という疑問が湧くのは当然のなりゆきでしょう。私自身も、聞こえる世界と聞こえない世界という二つの世界のあいだに深い溝が横たわっているために、なかなか突破口を見出すことができなかったように思います。結局は、大学で聾のコミュニティに入って聞こえない世界のほうに軸足を置く形になったのですが、ここに辿りつくまでかなり時間がかかりました。とはいっても聾者の中では難聴者であり、難聴者の中では聾者である、そもそも目が見えづらいために聴覚障害者の中にいてもなお障害者である、という微妙な立ち位置にいるのでアイデンティティ探しの旅はもうしばらく続きそうです。

今までの四半世紀を見返すと、それなりに山あり谷ありという感じではあったものの、正直、聴覚障害に関しては適応が進んでいるいて自分では不幸だとかいったネガティブな気持ちはあまりありません。難聴も白内障も歳を取れば多くの人が経験するので他の人より早く歳をとってしまったという感じでしょうか。耳が聞こえないのと目に病気があるために不便なことは多々あるのですが、基本的には健常の人と変わらない生活を送ることができています。

ただ、障害者になりたくてなったわけではないので予防接種によって社会が風疹などの感染症から守られ病気や障害を持たずに済む未来、そして病気や障害があっても学んだり働いたりするチャンスが与えられる未来を残したいです。最近、風疹なんか罹ったって軽く済むんだから子供の頃みんなで罹ればいいじゃんという意見を目にしたのですが、先天性風疹症候群の子供がたくさん生まれていた時代に戻すなんて絶対にありえません。障害への理解という観点からいっても今のほうが断然いいです。私のころはまだ口話教育の時代ゆえ手話を禁止していた学校もあり、今のように手話を堂々と使えるような時代ではありませんでした。昔よりも今のほうがいい時代だなあと思うのですが、将来の若い人たちにも昔より今のほうがいいと思ってもらいたいです。

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