10月31日、WHOがオーストラリアを風疹排除国と認定し、CNNが『オーストラリア、風疹根絶を宣言 米は日本への渡航自粛を勧告』と報じました。
(注意:WHOの発表ではeliminateという単語が使われており、正確には「排除」です。「根絶」とは天然痘のように自然界においてウイルスそのものが存在しない状態を表します。)
オーストラリアで風疹の排除目標を達成した一方、日本では過去の教訓を生かさず再び風疹の流行が起きています。10月21日まで(第42週)の風疹患者累積報告数は1,486人となり、1週間で197人増加しました。100人以上の報告は7週連続です。
妊婦の周囲で風疹を流行させないためには、妊娠希望の有無あるいは婚姻の有無にかかわらず抗体検査や予防接種を受けやすい環境を整えることが必要ですが、ワクチンの生産体制や助成のための財源確保などが問題となり、ワクチン接種を希望する国民の需要にこたえられない状況が続いています。
10月30日に開催された「第24回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会」の資料2-1には「当面の対応」として、特に届出数の多い東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県および愛知県において、「妊娠を希望される女性」と「妊娠されている女性の同居家族」に対する対策を行うとしています。厚労省は上記5都府県に優先的にワクチンを供給するよう業者に依頼していますが、上記の方針により「妊娠を希望される女性」と「妊娠されている女性の同居家族」であることを確認したうえでワクチンを医療機関に供給するよう求めています。
30代から50代の男性の感染が目立つことから、該当世代に対する対策を呼びかける報道が相次いでいますが、国の当面の対策は妊婦への対策が最優先であり、感染者の多い世代への対策は来年度まで持ち越される見通しです。十分な量のワクチンを供給できないことから、ワクチン費用ではなく抗体検査の費用を無料とし、検査の結果抗体価が低い人に対して接種をよびかけるとのことです。
国の医療政策のせいで、定期の予防接種を受ける機会がなかったか、1回しか受けていない方々が被害を被っているのですから、無料にするべきなのは抗体検査ではなく予防接種なのではないでしょうか。
抗体検査や予防接種の費用助成の対象者を男性に拡大する取り組みが始まっています。東京都は、抗体検査の対象者を、妊娠を予定または希望する女性だけでなく、妊婦の同居者や妊娠を予定または希望する女性の同居者に拡大しました。独自の対策を行っている区もあり、特に足立区は19歳以上の男女に対象を拡大しています。足立区のように妊娠の有無を条件から外し、男女の区別なく、抗体検査や予防接種を受けられるようにしてほしいと思います。