風疹のこと

風しん流行の兆しあり。30~50代の男性は特に要注意。

風しん累積報告数の推移 2012年~2018年
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風しん累積報告数の推移 2012年~2018年

今年の夏、再び風疹流行の兆しが見えている。ここ数週間のあいだに東京都や千葉県での患者が急増し、2018年第1~32週の風疹患者累積報告数は139人となった。

第30週(7月23日~29日) 19人
第31週(7月30日~8月5日) 22人
第32週(8月6日~12日) 39人

報告された患者の9割が成人で、男性107名、女性22名と、男性が女性の約3倍であり、予防接種歴は無しあるいは不明が大半とのことである。2017年の調査では、30~50代の男性を中心に風疹への免疫を持っていない人がまだ残っていることが明らかになっており、今回の流行の兆しはそれを裏付けるものとなっている。

2013年の風疹大流行では、14,344人の報告があり、45名の先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれた。2012年から2014年にかけて出生した45名のうち11名が死亡しており(10名が生後半年以内に死亡)、そのほぼ全例で先天性心疾患を合併している。風疹が流行していなければ、失われることのなかった命だ。34名のサバイバー(生存者)となった子どもたちも、難聴や白内障などの病気や障害をかかえており、彼らの人生に大きなインパクトをおよぼしている。

私自身も30年前ほど前に先天性風疹症候群で生まれたが、風疹のせいで重い難聴となり、片耳は全く聞こえなくなってしまった。目は白内障と緑内障になり手術を受けた。心臓病(心室中隔欠損症)が自然治癒したことは幸運だったが、目と耳の両方から情報が得られにくいためにできないことが多々あり、進学や就職の選択肢も狭められることになった。

せめて目か耳かどちらか片方だけにしてくれたらよかったのに、と痛切に思う。障害のない人生があったらあんなこと、こんなことができるのにということを考え始めると発狂しそうになる。障害のある人生はかならずしも不幸なものではなく、むしろ障害をもっているからこそ見えるユニークな世界もまた楽しいとは思いつつも、次世代の子どもたちには自分と同じ思いをさせたくないと思っている。

風疹の流行は過去になんども繰り返され、そのたびに先天性風疹症候群の赤ちゃんが産まれる悲劇が繰り返されてきた。流行を繰り返さないためには、ワクチン接種を推進し社会全体の抗体保有率を上げる必要がある。東京都や神奈川県など一部の自治体では接種費用を助成しているが、対象者が妊娠を希望する女性及びそのパートナーであることが多い。結婚や妊娠希望の有無という条件を取り払い、接種を希望する人全員が受けられるようにするべきだ。今の中途半端な対策では今後も再び流行が繰り返されるのではないかと心配している。

風疹は予防接種により、赤ちゃんの命を守ることにつながる。MRワクチンを打てば、少し前まで流行っていた麻疹も予防できる。忙しい方は抗体検査をすっ飛ばしていきなり予防接種でもOKだ。結婚や妊娠を考えているカップルだけでなく、30代〜50代の男性も要注意なのでぜひ予防接種を検討してほしい。風疹で障害や病気をもち苦しむお母さんや子どもをなくすために、風疹の流行が起きないようにしてほしいと心から願っている。これ以上感染が拡大しませんように。