耳のこと

もし、難聴が治る未来が来たら?

この記事は約2分で読めます。

最近、『iPS細胞から遺伝性難聴の原因となる内耳ギャップ結合形成細胞を作製』したというプレスリリースが順天堂大学から出ました。臨床応用にはまだまだ時間がかかると思われるのですが、この研究のように再生医療の研究でiPS細胞の活用が拡がっており、いつかは難聴を治療できる時代が到来しそうです。「もしかしたら治るのでは?」という期待も膨らみますね。

ただ、生まれつき聞こえない人の場合は「聞こえるようになったね、よかったね。」では済まないと思います(中途失聴の人でもそうだとは思いますが)。アイデンティティの再構築、聞こえる人との見えない壁、そして年単位のリハビリ。長い道のりが待っています。

聞こえない人(主に難聴の人)は聞こえない世界と聞こえる世界の二つでバランスを保っています。聞こえる世界で生きづらさを感じても補聴器や人工内耳をオフにすれば一時的にでもそこから逃れることができます。四六時中聞こえる状態になれば聞こえる世界から逃げることはできません。聞こえない世界で生きてきた人が聞こえる世界に適応するのには時間が掛かるでしょう。

さらに、聞こえるようになっても見えない障害は残ります。障害があることによって失われたチャンス、得られるはずだった経験や知識を取り返すことはできません。経験や知識が不足しているために、他の聞こえる人と同じようには聞こえなかったり、他の人と同じように扱ってもらえないという状況を経験することになるはずです。

もちろんリハビリだって大変です。今でも先まれつき聞こえない人が大人になってから人工内耳を使うのは難しいのだそうです。音が聞こえてもそれを言葉として認識することは簡単ではありません。手術を受けて言葉が聞き取れるようになった人はいるようですが、最初は雑音のような音が入るだけで、会話ができるようになるまでには年単位の時間を要します。

生まれつき聞こえない人が聞こえるようになる素晴らしい未来が来たとしても、聞こえる耳を手に入れるにはそれなりの覚悟や勇気が必要です。新たなチャンスを作れるだけの気力があるか、新たな価値観を受け入れるだけの柔軟さがあるか。ハードなチャレンジは若い人のほうが向いているかもしれません。次世代の皆さんに期待しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました